- 関節をひねって痛める「捻挫」
- 無理な動作で筋肉が破れる「肉離れ」
- 捻挫と肉離れの見分け方
- 捻挫と肉離れの原因
- 捻挫と肉離れの症状
- 捻挫と肉離れの検査と診断
- 捻挫と肉離れの重症度チェック
- 捻挫と肉離れの応急処置!早く治すコツ
- 捻挫と肉離れの治療
- 捻挫と肉離れの予防
関節をひねって痛める「捻挫」
関節は骨をつなぎ、体を自由に動かすための重要な運動器です。
関節包という袋に包まれ、中には軟骨や関節液があり、スムーズな動きを助けています。
外側には靱帯があり、骨同士をつなぎ、安定した動きを支えています。
そして、捻挫とは、不自然にひねることで関節の靱帯や腱、軟骨を傷つけるケガです。
内出血が起こり、その部分が腫れることもあります。
足首や指に多く見られ、スポーツや転倒、高齢者の階段での転落などで発生します。
無理な動作で筋肉が破れる「肉離れ」
肉離れは正式には「筋挫傷」といい、急な動作で筋膜や筋繊維が損傷・断裂することです。
発症時には激痛が走り、運動を続けることが困難になります。
断裂の瞬間に「プチッ」という音がすることもあります。
主な原因には、急なダッシュやジャンプ、筋肉疲労、加齢が挙げられます。
太ももやふくらはぎの筋肉筋など下半身に多く発生します。
日頃からストレッチを行い、予防に努めることが重要です。
捻挫と肉離れの見分け方
捻挫はレントゲン検査で異常がない関節のケガです。
痛みが強く、ぐらつきが大きい場合は重度の捻挫や骨折の可能性もあります。
一方、肉離れは筋肉や筋腱接合部の損傷で、筋肉を伸ばしたときの痛みが特徴です。
軽度から動かせないほど重症なこともあります。
捻挫と肉離れの原因
捻挫と肉離れは、以下のような状況で発生します。
これらのケガは、スポーツ中に相手選手との接触や転倒をきっかけに起こります。
特にラグビーなどのコンタクトスポーツではリスクが高いです。
また、バスケットボールやサッカーなどの急なダッシュや方向転換、ジャンプ動作が多いスポーツでも肉離れが生じやすいです。
スポーツだけでなく、酔っているときには、千鳥足でふらつきやすく、転倒による捻挫や打撲が起こりやすく、階段やベッドからの転落も捻挫や打撲の原因となります。
捻挫と肉離れの症状
捻挫の症状
捻挫は足関節に多く見られ、バランスを崩したときや転倒などで発生します。
症状は以下の3段階に分類されます。
- 1度: 軽い痛みや腫れがあり、靱帯の一部が断裂
- 2度: 痛みや腫れがひどくなり、関節の動きが制限される。靱帯が部分的に断裂
- 3度: 強い痛みや腫れ、関節の不安定。靱帯が完全に断裂し、手術が必要になることもある
肉離れの症状
肉離れは筋肉がある場所ならどこでも起こり得ますが、特に腓腹筋、ハムストリングス、大腿四頭筋に多いです。
筋肉を動かそうとすると痛みが伴い、体重をかけると歩行困難になることもあります。
- 1度: 軽い出血はあるが、腱に損傷はなし
- 2度: 腱にも損傷があり、力をかけると痛む
- 3度: 腱が完全に断裂し、見た目に明らかな変化がある
捻挫と肉離れの検査と診断
捻挫の検査と診断
問診、触診、MRI、超音波検査を行います。
レントゲン検査では、骨折の有無を確認します。
(MRIは必要時近隣の提携病院で検査を行います)
肉離れの検査と診断
MRIや超音波検査で詳細な重症度を判定します。
筋痙攣や筋打撲傷との鑑別が必要です。
筋痙攣は一時的な痙攣による痛み、筋打撲傷は外力による損傷です。
(MRIは必要時近隣の提携病院で検査を行います)
捻挫と肉離れの重症度チェック
捻挫の重症度
捻挫は靭帯の損傷程度によって、次の3つに分類されます。
- 1度:一時的に靭帯が伸びている
- 2度:部分的に靱帯が切れている
- 3度:完全に靱帯が切れており(靱帯断裂)、関節が不安定
肉離れの重症度
肉離れはMRI画像に基づいて以下のように分類されます。
- Ⅰ型(軽傷): 筋膜や腱に損傷はなく、筋肉内での出血が見られる(出血型)
- Ⅱ型(中等症): 筋腱移行部での損傷はあるが、完全断裂や付着部の裂離はない(筋腱移行部損傷型)
- Ⅲ型(重症): 筋腱の短縮を伴う完全断裂や付着部裂離が見られる(筋腱付着部損傷型)
重症度は治療やリハビリ、競技復帰の期間に大きく影響します。
そのため、エコーやMRIなどの画像診断を用いて正確に判定します。
(MRIは必要時近隣の提携病院で検査を行います)
捻挫と肉離れの応急処置!早く治すコツ
捻挫や肉離れはスポーツ外傷の一種です。
早期回復を目指すために、以下のPOLICE処置を行う必要があります。
- 保護する(Protection): 患部を保護し、松葉杖や車椅子を使用して体重をかけないようにします
- 最適な負荷をかける(Optimal Loading): 痛みが出ない範囲で適切な負荷をかけます
- 冷やす(Icing): 氷のうをタオル越しに当てて患部を冷やします
- 圧迫する(Compression): 包帯やテーピングで患部を圧迫します
- 挙上する(Elevation): 足を心臓より高い位置に上げます
また、PRICE処置も有効です。
- 保護(Protect): 包帯やテーピングで関節を固定します
- 安静(Rest): 患部を安静に保ちます
- 冷却(Icing): 氷水をビニール袋に入れ、15分冷やします
- 圧迫(Compression): 包帯やタオルで患部を圧迫します
- 挙上(Elevation): 患部を心臓より高くします
これらは応急処置であり、早めに医療機関で診てもらいましょう。
適切な処置が行われない場合、後遺症が残ることもあります。
捻挫と肉離れの治療
捻挫の治療
捻挫は症状の重さによって治療方法が異なります。
軽症(1度):RICE療法を行い、テーピングやサポーターで安静にします。
中等症(2度):医師の診察を受け、必要に応じてシーネやギプスで固定します。
重症(3度):不安定性が強くない場合は保存療法、強い場合は手術を行うこともあります。
リハビリテーション
腫れが引くまでは取り外し可能なU字型のギプスシーネを使用し、その後は歩行ギプスを装着します。
約3週間の固定後、装具を用いてリハビリを開始し、6週間後にジョギングを始め、3か月後を目安にスポーツ復帰を目指します。
手術療法
靱帯の縫合を行い、術後は2〜3週間のギプス固定が必要です。
その後は保存療法と同様のリハビリを行います。
不適切な治療は、足関節の不安定性や変形性足関節症、捻挫を繰り返すリスクがあるため、適切な治療が重要です。
肉離れの治療
肉離れは多くの場合、保存療法が選ばれますが、裂離損傷や腱付着部での断裂では手術療法を実施する場合もあります。
PRP療法(PFC-FD™療法)
自身の血液から抽出した血小板を使用する再生医療の一種です。血小板には、組織修復を促進する成長因子が豊富に含まれており、これを患部に注入することで、自然治癒力を高め、治療を促進します。
特に回復を早めたいアスリートや、仕事や生活に早期復帰を希望する方に適しています。
PRP療法は非常に効果的ですが、完全な回復にはリハビリテーションや適切な運動制限が必要です。また、効果には個人差があるため、医師との相談が重要です。
リハビリテーション
肉離れに多いハムストリングの損傷を例にお伝えします。
PRICE処置を行い、患部を保護します。
ジョギング前に痛みがないことを確認し、ストレッチと筋トレを行います。
痛みが消えたら速歩やジョギング、抵抗痛が消えたら加速走を開始します。
痛みや筋力低下がないことを確認しながら強度を増やします。
圧痛なし、筋力・柔軟性テストで痛みなし、スポーツ動作中の痛みなし、左右の柔軟性差なし、心理的な不安なしを確認します。
ストレッチや筋トレ、適切なウォーミングアップを計画し、日々のトレーニングに取り入れます。
手術療法
MRIで筋・腱の連続性が完全に断たれ、広範な血腫と断端の短縮が確認される場合、手術が検討されます。
重症度分類でⅢ型に該当する方が主な対象です。
(MRIは必要時近隣の提携病院で検査を行います)
捻挫と肉離れの予防
捻挫と肉離れの予防法については以下の通りです。
柔軟性を保つ
下半身の柔軟性を高めることで、捻挫や肉離れの予防になります。
個々に合った運動メニューを実践しましょう。
アウターマッスルを鍛える
アウターマッスルの強化で、急な負荷による肉離れの予防ができます。
筋力トレーニング
筋力低下は怪我のリスクを高めます。
スクワットで足腰の筋力を強化しましょう。
テーピングで固定する
関節を固定するテーピングで、捻挫の予防になります。
特に過去に捻挫したことがある場合は効果的です。
正しいフォームを身につける
誤ったフォームは組織に負担がかかり、怪我の原因になります。
定期的にフォームを確認しましょう。
全身の使い方を見直す
捻挫や肉離れの予防には、上半身と下半身の連携が重要です。
ウォーミングアップ・クールダウンを行う
運動前後には、筋肉や関節を痛めないように「ウォーミングアップ」と硬くなった筋肉をしっかりと伸ばす「クールダウン」を行いましょう。
お風呂上がりのストレッチ
習慣的なストレッチで柔軟性を保ちましょう。
特に太ももやふくらはぎのストレッチが効果的です。