小学生から大人まで発症する「野球肘」
野球肘は、野球の投球動作によって肘に負担がかかり、傷めてしまうスポーツ障害です。
特に成長期の小中学生は、肘に弱い成長軟骨があり、野球肘を発症しやすい傾向にあります。
肘の内側で起こる内側型、肘の外側で起こる外側型、肘の後方で起こる後方型の3種類に分けられます。
また、10代後半や成人になってから発症するケースもあります。
野球肘の原因
野球肘は、投球動作によって肩や肘に大きな負担がかかることで発症します。
過剰な投球数や投球フォームが正しくない場合、肘にかかる負担が増し、痛みを引き起こしやすくなります。
また、股関節や体幹の柔軟性の低下や筋力不足も野球肘の原因となることがあります。
野球肘の症状別分類
肘の内側が痛む「内側型野球肘」
投球時に内側側副靭帯が骨に引っ張られることで、骨や軟骨が損傷したものです。
野球肘の中で最も一般的で10〜30%の頻度で発生します。
ほとんどの場合、一定期間の投球を中止するなどの保存療法で治癒します。
重度の場合には、肘の内側の骨が引っ張られて剥離骨折を引き起こすことがあります。
また、繰り返し負荷がかかると靭帯が緩んで、肘関節の機能が低下してしまうため、球速の低下や遠投の距離の減少などの障害が発生する可能性があります。
肘の外側が痛む「外側型野球肘」
肘の外側に位置する上腕骨小頭に負担がかかることで生じます。
この状態は離断性骨軟骨炎とも呼ばれ、1〜3%の頻度で発生します。
初期段階では痛みを感じにくいため、症状が現れて病院を受診した時にはかなり進行していることが多く、手術が必要になることもあります。
投球数の多い選手は、症状がなくても受診することが推奨されます。
肘の後方が痛む「後方型野球肘」
肘の後ろ側にある尺骨肘頭に負担がかかることで発生します。
投球動作の際、ボールリリース直後から腕を振り下ろすフォロースルーの動作で肘が伸びることで、肘頭と肘頭窩が衝突し、関節に炎症が生じます。
また、繰り返し衝突することによる疲労骨折や骨端線自体が損傷を受けることがあります。
野球肘のセルフチェック
- 投球時に肘が痛い
- 投球直後に痛みが出るが、その後引く
- 投球時・投球直後以外でも痛みが続く
- 痛みがあって肘をスムーズに動かせない
- 投球数が多くなると痛みが出る・強くなる
- 全力で投げているのに以前よりも球威が落ちている
初期では、投球しなければ痛みが引くため、練習を継続してしまい、日に日に悪化するケースが少なくありません。
痛みがあった時には、すぐに投球を中止し、医療機関を受診してください。
野球肘の検査と診断
問診では、いつ、どのような痛みが出るのか、日常生活での痛みの有無を確認します。
その上で、肘の動きや痛みなどを確認し、レントゲン検査やMRI検査を実施します。
(MRIは必要時近隣の提携病院で検査を行います)
野球肘の治療
野球肘の治療は、主に保存療法が中心です。
以下のような治療が行われます。
リハビリテーション
主に保存療法としてリハビリテーションを行います。
投球を禁止し、コンディショニングや低出力超音波を実施します。
また、ストレッチや筋力トレーニングも行い、再発防止のために正しいフォームを身につけることが重要です。
体外衝撃波治療
肘に衝撃波を照射する治療法です。
衝撃波によって痛みの原因となる自由神経終末を破壊し、痛みの軽減や患部の血行改善、血管新生を促進し、組織の修復を図ります。
現在、野球肘などの障害・疾患に対しては自費診療です。
手術療法
手術が必要な場合は、関係医療機関をご紹介いたします。
野球肘を早く治す方法
安静にする
肘にかかる負担を減らすために、痛みがある場合は投球や肘を使う活動を一時的に控えます。必要なら、安静にする期間中は完全に肘を休ませることも大切です。
アイスパック
炎症を抑えるために、患部にアイスパックを当てます。1回につき15~20分、1日に数回行います。ただし、直接皮膚に当てると凍傷のリスクがあるので、タオルなどで包んで使用します。
圧迫とエレベーション
肘を包帯やサポーターで軽く圧迫し、心臓より高い位置に挙げることで腫れを抑えます。
ストレッチとリハビリ
痛みが和らいだら、肘周りの筋肉を強化するためのストレッチやリハビリを行います。以下のようなエクササイズが効果的です。
前腕のストレッチ
手のひらを下にして腕を伸ばし、反対の手で指を引っ張ります。
前腕(内側の筋肉)の筋トレ「リストカール」
- ベンチや椅子に座ります。前腕を太ももの上に置き、手首を膝の先から出すようにします。
- 手のひらを上に向けてダンベルを持ちます。
- 手首を下に曲げ、ダンベルをできるだけ下げます。このとき、前腕は動かさないように注意します。
- 手首を上に曲げてダンベルを持ち上げます。できるだけ高く上げ、前腕の筋肉を収縮させます。
- これを10~15回繰り返します。
前腕(外側の筋肉)の筋トレ「リバースリストカール」
- ベンチや椅子に座ります。前腕を太ももの上に置き、手首を膝の先から出すようにします。
- 手のひらを下に向けてダンベルを持ちます。
- 手首を下に曲げ、ダンベルをできるだけ下げます。このとき、前腕は動かさないように注意します。
- 手首を上に曲げてダンベルを持ち上げます。できるだけ高く上げ、前腕の筋肉を収縮させます。
- これを10~15回繰り返します。
投球フォームの改善
再発を防ぐために、投球フォームを見直すことも重要です。コーチや専門家の指導を受けて、肘に負担のかからないフォームを身につけましょう。
装具の使用
投球時に肘への負担を軽減するための装具やサポーターを使用することも効果的です。